展覧会

 

Exhibition

【開催趣旨】

 2021年夏、海の見える杜美術館では、「アート魚ッチング―描かれた水の仲間たち―」と題して、絵に描かれた魚をはじめとする水の中の生き物たちを紹介する展覧会を開催いたします。

 魚は昔から私たちの生活と関わりが深く、絵や工芸など美術の世界にも表されてきました。本展は、当館が所蔵する江戸時代から昭和時代までに制作された魚たちの絵を紹介する展覧会です。江戸時代の著名な浮世絵師・歌川広重の《魚づくし》や、「鯉の滝登り」図などのおめでたい絵、竹内栖鳳や池田遙邨など近代の日本画家が手掛けた作品などを展示します。特に、昭和期に活躍し、「魚の画家」として知られた大野麥風の《大日本魚類画集》は、一見版画とは思えないほど細やかに表された作品で、水中に棲む魚たちの姿を生き生きと描き出した傑作です。今回は、《大日本魚類画集》全6輯72枚のうち、当館が所蔵する4輯47枚を一挙に公開します。 人々に身近な存在でありながら、水中という別世界に棲む生物の新しい魅力を、様々な個性を持つ画家たちの視線を通して見つけていただければ幸いです。

 また、今回は、夏休み期間にあわせてワークショップの開催やワークシートの配布を行います。この夏は、海の見える杜美術館で、美しく色鮮やかな魚、面白い姿の珍しい魚、画面せましと自由に泳ぎ回る魚など、美術の中で様々に表現された水の仲間たちの姿を、どうぞお楽しみください。

チラシダウンロードはこちら

[会期]2021年5月29日(土)~8月22日(日)

[休館日]月曜日(ただし8月9日(月・祝)は開館し、翌10日(火)を休館、7月13日(火)~16日(金)

[開館時間]10時~17時(入館は16時30分まで)

[入館料]一般1,000円、高大生500円、中学生以下無料

[主催]海の見える杜美術館

[後援]広島県教育委員会、廿日市市教育委員会

 

 

○イベント情報

・当館学芸員によるギャラリートーク

[日時]6月26日(土)、7月31日(土)、8月21日(土)13:30〜(45分程度)

[会場]海の見える杜美術館 展示室

[参加費]無料(ただし、入館料が必要です)※事前申し込み不要

 

・夏休み企画① ハーバリウム水族館を作ろう! ※本企画は定員に達しましたので、申込みを締め切りとさせていただきます。

[日時]8月14日(土)13時30分~(所要時間:2時間程度)

[会場]海の見える杜美術館 多目的室

[定員]5名(小学生以上、先着順、要事前申込)

[参加費]1,000円(ただし、入館料が別途必要です)

[申込方法]お電話かメールでお申し込みください。

その際、参加者のお名前と電話番号をお知らせください。

なお、先着順にて定員に達し次第締め切りとさせていただきます。

 

- 展覧会の構成と主な出品作品 -

第1章 広重の魚—江戸の人々が親しんだ魚たち—

Chapter One Hiroshige’s Fish:  The Beloved Fish of the Edo Folk

海に囲まれ、全国いたるところに河川が流れる日本。昔の人々も、春の鰹や夏の鱧など、季節ごとに食卓を飾る多種多様な魚介類に舌鼓をうちました。身近で親しみある存在であった魚たちは、江戸時代の狂歌(しゃれや風刺をきかせたこっけいな歌)や俳諧に詠みこまれます。そして歌川広重(1797〜1858)などの有名な浮世絵師たちは、これらの詩歌に魚の絵を添えました。当時流行した生き物たちへの博物学的な関心によって、絵師達は魚の姿を観察し克明に描き出しました。広重がてがけた「魚づくし」と呼ばれる魚の浮世絵シリーズもその一例で、狂歌に添えて、多種多様な魚介を描きます。その精緻な彫りや色彩からは、魚の鱗や皮膚の感触までが伝わってくるようです。

歌川広重《鯛に山椒》 天保3~4年(1832~33)

歌川広重《鮎》 天保(1830~44)後期頃

歌川広重《かれい・かながしらに笹》 天保3~4年(1832~33)

歌川広重《鯉》 天保(1830~44)後期頃

第2章 福よコイ!―めでタイお魚大集合!!

Chapter Two Luck and Love: A Grand Gathering of Auspicious Marine Life!

中国ではお祝いの席に魚料理が欠かせないそうです。その理由は、中国語で「魚(yu)」は「余(yu)」と発音が同じであること。「有魚(魚がある)」は「有余(余裕がある)」に通じると考えられ、ゆとりある生活を送ることができるよう願いを込めて、魚料理をめでたいものとして楽しみます。古来中国で魚は、ゆとりや富をもたらす吉祥の、つまりおめでたい出来事を呼び込むモチーフとして、漢詩に詠まれ、工芸や絵画の中に象られてきました。

魚の持つ吉祥の意味合いは日本にももたらされ、ことに中国の「登龍門」の故事にちなみ出世をもたらすと考えられた鯉などが盛んに描かれるようになりました。また、「めでたい」と「鯛」、「勝つ」と「鰹」、「福」と「河豚」など、音が通じることを通して特定の魚に吉祥の意味が見いだされます。ここでは、江戸時代の鯉の図、明治大正時代に縁起の良い図柄をあしらって正月に配られた引札、また、中国で現代でも飾られている新年を寿ぐ年画をご覧頂きます。

伝狩野休真《滝登鯉》

嘉永7年(1854)

天龍道人《桃花鯉魚図》

天明8年(1788)

尾竹国一《日の出 恵比寿と鯛》 明治36年(1903)

《金魚満堂》 1984頃

第3章 近代の画家たちが見た魚—多様な表現に見る形・色・動き—

Chapter Three The Diverse Colorful Fish of the Modern Masters

 

江戸時代までは、日本において、絵はその用途に合わせて、人や空間を寿ぐ、場を華やかに彩るなどの役割を重要としてきました。しかし江戸時代が終わりを迎え、明治という西洋の文化を取り入れた新しい時代になると、絵画においては画家の個性を表現することが重要性を帯びるようになりました。画家たちは伝統的な画題を引き継ぎながらも、自分が見出した「美」や「真」を絵画に込めていきます。

ここでは明治から昭和初期の魚の作品をご覧いただきます。竹内栖鳳は、川の水流と、そこから跳ねた魚の一瞬の動きをとらえ、夏の涼を感じさせる風情ある作品を描き、村上華岳は、質感や量感まで感じさせる克明な写実を、魚介の描写を通して実践しようとしました。これら作品に見られる魚の描き方は多様で、魚たちを眺める画家のそれぞれの視線の違いを感じさせます。画家たちの多様な個性がとらえた魚をご覧ください。

森寛斎《魚介尽くし》

明治5~6年(1872~73)

竹内栖鳳《夏渓魚跳図》

明治35年(1902)頃

野長瀬晩花《夏の池》

大正時代

村上華岳《金頭》 大正時代末期

第4章 「魚の画家」大野麥風 ‒《大日本魚類画集》の世界‒

Chapter Four Ono Bakufu and the ‘Pictures of Fish in Japan’

この章では、「魚の画家」大野麥風によって生み出された『大日本魚類画集』を紹介します。

『大日本魚類画集』は、兵庫の西宮書院から昭和12年(1937)から約7年にわたって刊行された500部限定の版画作品集です。原画を担当した大野麥風は、この作品を作るにあたって、よりリアルな魚の色彩や生態を描き出すために、当時まだ珍しかった水族館に通い詰め、時には潜水艦に乗り込み、実際に泳ぐ魚の姿を観察しました。また、「原色木版二百度手摺」の謳い文句の通り、1つの作品につき、200枚もの版を起こして摺り重ねることによって、魚体の絶妙な色彩や色調を出すことにも成功しました。

第二次世界大戦中の厳しい状況の中、この一大画集の制作・刊行に成功した麥風は名実ともに「魚の画家」として知られるようになり、これ以降も数多くの魚類の作品を描きました。

ここでは、全6輯72枚のうち、当館が所蔵する4輯47枚の作品を展示します。絵師、彫師、摺師の技術の粋を集めた、美しく緻密な『大日本魚類画集』の世界をお楽しみください。

大野麥風《大日本魚類画集》第1輯第6回 「飛魚」

昭和13年(1938)1月

大野麥風《大日本魚類画集》第4輯第5回 「ニシン」

昭和16年(1941)1月

大野麥風《大日本魚類画集》第2輯第3回 「鯰」

昭和13年(1938)11月

大野麥風《大日本魚類画集》第3輯第5回 「フグ」

昭和15年(1940)1月