第4回海の見える杜美術館
彫刻ビエンナーレ
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彫刻ビエンナーレ審査結果のお知らせ

この度の彫刻ビエンナーレでは、多数のご応募をいただきました。皆さま、誠にありがとうございました。

応募件数40件の中から厳選な審査の結果、優秀賞及び奨励賞を以下の作品に決定いたしましたのでここに発表いたします。
 
受賞作品
優秀賞: 作品名 星(せい)─星命(いのち)の誕生─
  作者 大迫 稔(おおさこ みのる)
  制作意図 人類が誕生する遥か昔から、星は生まれそして消えて行く。そのくり返しの中で、いろいろな生命が誕生してくる。その大きな生命の源である星が誕生する際のパワー・エネルギーを、地球で生まれた石を使って表現してみた。
  材質 (黒御影石)、台座(白御影石)
星−星命の誕生−※写真は試作品です。
奨励賞: 作品名 Natural Posture
  作者 水本 智久(みずもと ともひさ)
  制作意図 単純にして複雑に、簡素にして明快に、面と線、直線と曲線、陰と陽。お互いに相反するものへの響き合い。そんな中に自然なフォルムを考えてみた。
  材質 ステンレススチール、台座(黒御影石)
※写真は試作品です。
奨励賞: 作品名 海辺にて(お兄ちゃんと一緒)
  作者 鈴木 法明(すずき のりあき)
  制作意図 私の趣味は釣りです。7人兄弟の末っ子で妹も弟も残念ながらいません。もしいたとしたら、「海辺で」こんな感じで過ごせたかなと一寸想像しながら制作してみました。
  材質

人体、台座(鍛金・鍛造ステンレス)衣服、帽子(鍛金・鍛造チタン)

※写真は試作品です。

第4回海の見える杜美術館彫刻ビエンナーレ

審査経過について
海の見える杜美術館
彫刻ビエンナーレ事務局長 田中修二

  第4回目の彫刻ビエンナーレは、優秀賞1点、奨励賞2点という結果になりました。今回から大賞のみを杜の遊歩道に展示することとなったため、残念ながら出品作品のうちで屋外展示用の実制作を行なっていただくものはありませんでした。

 審査委員会は、今年度より海の見える杜美術館の顧問に就任された千足伸行氏が新たに加わり、7名となりました。しかし当日は、山本正道氏が欠席されたため、6人で審査を行ないました。
審査風景

 はじめに、これまでと同様、作品が展示される杜の遊歩道を全員で見てまわりました。その際に、前回の大賞作品の展示場所についても検討することとしました。 前回の大賞作品、朝野浩行氏の《杜の時空穴》は幅3.3メートルという大きさのため、まだ展示場所が決まらず、美術館に運ばれてきたときの梱包された状態で保管されています。その梱包をはずして完成作を実見したうえで、美術館が作成した原寸大のパネルを用いて、展示する場所を検討しました。  

審査風景

 現在、杜の遊歩道はこれまでの入口がある駐車場のところから、さらに下のほうまで敷地を広げる整備工事のまっただ中です。これまでのエリアはこう配の多い細長いものでしたが、これにより広々としたゆるやかな起伏をもつエリアが新たに加わり、前回の大賞作品もそこに展示することが検討されています。



審査風景

 原寸大のパネルをいろいろな場所に移動して、作品に最もふさわしい場所について話し合いながら歩くのは、屋外に彫刻が展示される過程のなかでの最も幸せな、わくわくする瞬間の一つであるのかもしれません。作品のパネルは、場所が変わるたびにその表情を変えます。ほんの少し動かしただけで、雰囲気が一変することもあります。それは作品の雰囲気ということだけではなく、周囲の空間も含めたものです。

 もちろん最終的には、美術館と作者が話し合ったうえで、美術館が決定することとなりますが、今回、審査委員からいくつかの候補の場所を提案できたことは、このビエンナーレの性格を考えるうえでも非常によかったと思います。それは、審査委員が個々の作品のみではなく、それが展示される空間や環境にまで積極的に関わることであり、また、より多くの人びとの眼によって作品のあるべき場所が吟味されるからです。
 屋外に彫刻を展示するのは、美術館の展示室のようないわゆる「ホワイト・キューブ」に作品を展示するのとは自ずとちがってきます。ある特定の空間のなかで作品が息づき、その作品の呼吸によって周囲の空間に新たな表情が生まれ、それがまた作品に影響を与えるといった、彫刻と自然とが互いに応答し合う関係性が生まれること。そこを訪れたたくさんの人びとがその関係性のなかに入っていって、そのことが作品とその空間に作用し、かつ人びとの心へとなにかを伝えていくこと。そうした彫刻と自然と人間の関係のあり方こそが、このビエンナーレの求めている一つの理想であると考えます。

審査風景

 だいぶ前書きが長くなりましたが、実際の審査も同じように、遊歩道での散策に時間をかけてしまい、予定よりだいぶ遅れて美術館の応接室で始まりました。
 一次審査ではまず各審査委員が3作品ずつを選び、それぞれに3、2、1点をつけました。すでに応募作品は一般の観覧者に見ていただけるように美術館入口近くの展示スペースに展示されていて、審査委員は30分ほどかけてそれを見てまわり、採点しました。その結果、

審査風景

得点を得た深田充夫、相原健作、林大作、香西繁廣、青野正、鈴木法明、新井浩、佐藤正和重孝、齊藤徹、大迫稔、水本智 久、 ゼロ・ヒガシダ、竹下友基、山崎哲郎各氏の14名の作品をのこすこととしました。
 この時点で、それぞれの作品について提出書類等をふくめて検討し、さらに二次審査を行ないました。そこでは審査委員が2作品にそれぞれ2点と1点をつけ、上記の作品のうち、深田充夫、林大作、香西繁廣、新井浩、 佐藤 正和重孝、大迫稔、水本智久、ゼロ・ヒガシダ、

審査風景

竹下友基、山崎哲郎各氏による10作品が選ばれました。
 さらにそのなかから1点のもの──1名の審査委員のみが第2位で選んだもの──は除外することとなり、林大作、香西繁廣、新井浩、大迫稔、水本智久、ゼロ・ヒガシダ各氏の6作品がのこりました。

審査風景

 ここからはそれら6作品を審査の部屋に運び込み、全員が意見を述べ合うかたちで審査を進めました。

 そのうち大迫氏の《星─星命の誕生─》については、梅本氏、千足氏、高橋氏、山梨氏から、中心にねじれをもたせた造形的な面白さ、新しさが評価されましたが、一方で拡大したときに材料の荷重に耐えられるかという疑問も出されました。林氏の《母音(vowel)》は、山梨氏から安定感と量感があって自然のなかにも映えることが評価されましたが、オカリナを思わせる穴を覗くようなかたちが前回の同氏の出品作からあまり変化がなく、また大賞作品と似た傾向のもので造形的な新味に欠ける点も指摘されました。藤嶋氏は、猫の鼻をモチーフにした香西氏の《はなニャー》について、アルミニウムという素材がいままでの受賞作にない点と、《母音(vowel)》と同様、子どもたちにも親しみやすい造形性をあげられました。
 新井氏の《蝶が舞う森─うつろい─》は2人の女性をモチーフにした数少ない具象的な作品で、前回のビエンナーレで同傾向の作品を出品された際には途中まで選考にのこったものの、手の切り方が不気味に見えてしまうのではという指摘がありました。今回はその点を修正して、より優しさのある作品になったことが、峯田氏と千足氏から評価されました。千足氏はまた、ダイナミックな曲面と球体の組み合わせが印象的な水本氏による《Natural Posture》のシャープな印象について述べられました。
 しかし以上のような意見が交わされていくなかで、とくにある1作品を複数の審査委員が強く推すことはなく、今回は大賞に該当する作品はないという結論に至りました。

 ここで一旦、奨励賞の選考に移り、一般の来館者による投票結果が審査委員各氏に示されました。得票数第1位の鈴木法明氏《海辺にて(お兄ちゃんと一緒)》は、審査委員による選考でも一次審査にのこった温かみのあるモチーフの作品で、奨励賞とすることについて全員が承諾しました。さらに得票数第2位の水本氏の作品が、二次審査にのこっていることから十分に奨励賞に値するという結論となりました。これにより、今回初めて奨励賞を2作品に与えることとなりました。
 その後、再び優秀賞の選定作業を進めましたが、ここではさきの議論の結果をふまえ、総合的に評価の高かった大迫氏と新井氏の2作品に絞られました。そして、大迫氏の作品が実際に屋外に展示するという点では難しいが造形的な新しさが見られること、新井氏については作風が固まっている印象があるといった意見が出され、最終的には挙手により、4名の審査委員が選んだ大迫氏の作品を優秀賞とすることに決定しました。

 前回の講評でも述べましたが、このビエンナーレも第1回から5年以上が過ぎました。私たちはこれまでの経過を見つめ直し、今回を新たな出発として考えました。優秀賞の実物制作がなくなったこともその変化の1つですが、それはいままでに4つの作品がこのビエンナーレによって展示されたことをふまえつつ、改めて遊歩道の空間をじっくりと作り上げていきたいという美術館側の気持ちの表われと考えていただければと思います。一方で、はじめて奨励賞に2作品を選んだように、審査委員会としてもできるかぎり新しいあり方を模索してみました。
 正直にいえば、そうした変化のなかで私たちが抱いていた期待を超えるような作品は、今回は見あたりませんでした。もちろん、すでに4作品が展示されたことで(予定も含む)、これから出品される方々には困難さも増していると思います。出品作品はどうしても以前の作品と比較され、また遊歩道の空間全体のなかでのバランスという点も審査のなかで考慮せざるをえません。このことは、うえで書いた審査の経過のなかでも少し触れました。
 しかし、今回の出品者の方々のうちでその点に関してまで考えてくださった方はほとんどいらっしゃらなかったように感じます。もしかしたら、そのようなことは作家の考えることではないと思われるかもしれませんが、屋外に彫刻を展示するということは、そうした点にまで意識をもって作品を制作しなければいけないという考え方も成り立つのではないでしょうか。空間全体が時とともに移りゆくものであるならば、当然そのときどきに展示が計画される作品のあり方も変化していくことでしょう。
 審査のなかで、作風が固まっていることについての指摘がいくつか出ました。それが表現にさらに磨きをかけていく段階の一つであることは十分に認めますし、自らの作風をもつこと自体を批判するものではありません。また、傾向と対策を考えて打算的に制作していただきたいというのでももちろんありません。けれども、私たちが期待するのは、「ホワイト・キュー ブ」のなかでは考える必要のないような、さまざまな制約(という言葉がよいかはわかりませんが)を逆にモチベーションのきっかけとして、それまでの自らの表現の枠を打ち破るような作品が生まれてくることなのです。このことこそが、「新人作家の発掘・援助」を主旨とする私たちのビエンナーレが求める“若さ”でもあります。
 どうかそんな冒険心をもって、これからも制作をつづけていただければと思います。

( 大分大学准教授・たなか しゅうじ )
審査委員会
期日: 2011年10月15日(土)
審査員:
<審査委員>
彫刻家
峯田 敏郎     
<審査委員>
美術評論家
藤嶋 俊會
<審査委員>
日本大学芸術学部教授
高橋 幸次
<審査委員>
東京文化財研究所
近・現代視覚芸術研究室長
山梨 絵美子

<審査委員>
当館総括顧問
成城大学名誉教授
千足 伸行

<審査委員>
当館館長
梅本 道生

※敬称略
以上の6名で構成致しました。

応募総数: 40点
審査方法:

・ 1次審査:各審査員が応募作品の中から、各々1〜3位を選出。
  (同一順位で複数を選んでも可)
・ 2次審査:1次審査選出作品の中から、各々1〜3位の3作品を選出。
・最終審査:協議の上、各賞を決定。

 本コンクールの開催にあたりましては、関係各位より多大なるご支援ご協力をいただきました。あらためて心より感謝申し上げます。
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