長い長いと思っていた(実際に長いのですが)西山翠嶂展も、そろそろ終わりが見えてまいりました。しかし2018年が終わることのほうを先に話題として挙げるべきですね(この原稿を書いているのは12月28日です)。2018年は当館にとってはリニューアルオープンという一大イベントがあった年でした。それなりに密度が濃い1年で長く感じたからでしょうか、うっかり「リニューアルしたのは去年じゃなかったっけ?」と思いそうになります。
リニューアル以来、「香水瓶の至宝展」「西南戦争浮世絵展」「西山翠嶂展」と3つの展覧会を開催してまいりましたが、3年間の休館を体験した私から申しますと、展覧会を開催して作品を見ていただける、感想をいただけるというのは非常にありがたいことです。
特に西山翠嶂の下絵は、当館の蔵に長らく眠っていたものですが、ずっと皆様に見ていただきたいと思っていたコレクションでしたので、このたびの展覧会で「おもしろい!」「西山翠嶂ってやっぱりすごい!」「こんな画家がいたなんて」などなどの感想をいただけていることを、本当にうれしく思っております。
さて。
展覧会のみどころとして紹介するのはちょっと違うかもしれませんが、やっぱりご紹介しておきたいのが図録です。
表紙の画像は広島県尾道市、生口島にある耕三寺博物館様がご所蔵の西山翠嶂作品《乍晴乍陰》(1929年(昭和4))です。滋賀県の瀬田にある唐橋という橋を俯瞰して描いた作品で、晴れから雨への気候の変化、橋の上を行き交う人々の様子をこまやかに描き出しており、何度見ても見飽きることのない名品です。おかげさまで本当に素晴らしい表紙になりました。
どなたかにこの図録をお見せするときは、だいたいまず表紙を自慢しますね。たまに事務所でも他の学芸から「いい表紙だね~」と言ってもらってご満悦です。今も手にとってしみじみと眺めています。
…表紙の素晴らしさばかりを力説してしまいましたが、開いても図版がたくさん載った充実の内容となっております。展覧会に出した作品はもちろんのこと、当館が所蔵する翠嶂の下絵や模写をすべて載せました。また、現存している作品も可能な限り掲載いたしました。翠嶂はこんなに素晴らしい作品をこんなに描いたのか、と驚いていただけるのではないかと思っております。さらに、作品の落款・印章(画家のはんことサインですね)も載せています。
西山翠嶂《馬》(1939年(昭和14)、京都市美術館蔵)と、韓幹《照夜白》(メトロポリタン美術館蔵)や李公麟の《五馬図巻》との関連について述べた論文も掲載しています(私の論文ではありませんが)。
会場でもテラスでもお読みいただけるのでよかったらぜひお手にとってご覧くださいませ。
今年の夏の記憶があまりないな~と思っていたのですが、この図録を作っていたからなんですね。いや~、充実したいい年でした。
今年も大変お世話になりました。当館に来て下さった皆様、ブログを見てくださっている皆様、どうぞよいお年をお迎えください!
森下麻衣子