「美酒佳肴」展、引き続き好評開催中です

9月9日の重陽の節句も過ぎたというのに、まだまだ真夏と同じ暑さが続く日々に驚かされます。

以前よりも秋が短くなった昨今ですが、巷にはイチジクや葡萄、梨など、晩夏から秋の果物が出回っていますね。

9月17日は中秋の名月(旧暦8月15日の十五夜)。

お月見には月見だんごが思い浮かびますが、この時期に穫れる里芋などの芋類がよくお供えされたため、中秋の名月は「芋名月」とも呼ばれます。

秋に河川敷で芋煮会をする東北・山形出身の私の実家でも、毎年中秋の名月には里芋がお供えされていたのを思い出します。

ちなみに旧暦9月13日の十三夜は、「栗名月」や「豆名月」と呼ばれます。芋名月と同じように、この頃に穫れる栗や豆がお供えされたため名付けられたそうです。

(余談ですが、私の実家では十三夜には栗がお供えされていました。)

十三夜は、秋が深まり涼しくなって空気が澄むため月がよりきれいに見えるともいわれ、満月よりも少しだけ欠けた月の方が趣深いと、こちらも名月として名高いものです。

   

さて、展覧会の会期も残すところあと10日ほどとなりました。

先日、果物を描いた中国版画作品や、魚を描いた歌川広重や大野麥風の版画作品の展示替えを行いました。また新たに展示された作品もご堪能ください。

左より 歌川広重《縞鯛・あいなめに南天》天保(1830~44)後期頃 海の見える杜美術館
      《かながしら・木の葉鰈に笹》天保3~4年(1832~33)頃 海の見える杜美術館
 大野麥風《大日本魚類画集 第4輯第2回「アイナメ」》昭和15年(1940)10月 海の見える杜美術館                      

また、当館の竹内栖鳳コレクションをご紹介する「竹内栖鳳展示室」では、「栖鳳作品に見る食の文化」をテーマに、栖鳳が絵付けした鉢や茶碗、猪口などのほか、食に関する作品を併せて展示しています。

スケッチ帖や習作として描かれた魚や野菜を描いた作品からは、栖鳳の鋭敏な感性が感じられます。栖鳳が日常目にしたのであろう身近な食材が、何気なくさらりと描かれています。京都の料亭「亀政」の長男として生まれた栖鳳は、幼いころから食文化に親しんできたのでしょうね。

栖鳳が絵付けをした猪口
左より《酒猪口 虎》《酒猪口 鰹》《酒猪口 鶴》大正8年(1919) 海の見える杜美術館
竹内栖鳳《習作》制作年代不詳 海の見える杜美術館

「美酒佳肴」展は9月23日(月・休)までです。

秋晴れの空のもと、遊歩道の散策が、少しずつ気持ちの良い季節になってきました。うみもりテラスからの眺めも、空気が澄んできてまた格別です。ぜひ展覧会とあわせてお楽しみください。

次回展「誘惑する風景―近代日本画探索―」が10月12日から開催予定です

今年の夏は夏好きにとってもなかなか手ごわい暑さで、秋の訪れを待ち遠しく思う今日この頃です。

少し先の展覧会のお知らせですが、海の見える杜美術館では10月12日から、冬季企画として「誘惑する風景―近代日本画探索―」展を開催いたします。当館が所蔵する近代作品の中から、風景を描いた作品をご紹介する企画…の予定です。

風景画、というと、どこが描かれているのか、そこに何があるのかを見るのも楽しみの一つですが、今回の展覧会では「なぜその風景がその時代に描かれたのか」という点も考えてみたいと思っています。

高橋史光 《室の津》1931年(昭和6)頃

今回の展覧会でも、近代の画家たちの力作が並ぶ予定です。是非ご覧いただきたい作品がいくつもありますが、高橋史光の《室の津》もそのうちの1点です。

高橋史光(1897~1970)は帝展を舞台に活躍した京都の日本画家で、この作品は兵庫県室津を描いたものと考えらえる作品です。これは第12回帝展に同画家が出品した《室の津》と同じ題材、同じ図様の作品です。明るい色彩と緻密な描写、細やかに描かれた女性たちの生活の様子や花々など、見ていて飽きない魅力的な作品です。

本作品はじめ、当館が所蔵する近代の風景画作品の数々をご紹介する予定です。現在の展示「美酒佳肴―絵で味わう美きもの―」もご好評いただいておりますが、次回展もよろしくお願いいたします。

※高橋史光画伯の作品について、現在著作権保護期間中ではありますが、今回、文化財の公開の目的のもと、本ブログ記事に掲載させていただきました。高橋史光画伯の著作権継承者の方は、お手数ではありますが、当館(mail:info@umam.jp ℡:0829563221)までご連絡くださいますようお願いいたします。