山田時計店 社長 山田正雄様から、引き続き貴重な資料をお送りいただきました。
まずは前回ご紹介しました引札の鮮明な画像です。
日の出、そして梅・竹・福寿草・裏白など吉祥の植物が描かれていることを考えると、お正月に配布した引札と考えられます。また、鶏が描かれているので酉年の正月の可能性が高いです。山田勝二時計店の電話番号が「261」になっています。明治34年(1901)金沢に電話が開設当初の加入者は183人(金沢市史編さん室編『金沢の百年 市史年表 明治編』金沢市 1965)なので、電話番号200番台の取得は明治35年(1902)以降となります。
あと、画像をクリックして引札を大きく伸ばして鶏の体をご覧ください。鶏の羽が描かれています。これは印刷ではなく、紙に凹凸をつけて表現したものです。明治時代の引札にはよく見られる技法です。
以上のことから考えますと、明治42年(酉年)のお正月の引札と思われます。
詳細不明の写真ですが、山田時計店様によりますと、金沢商工博覧会出展の時の写真ではないか、また33番になっている電話番号は大正末期に譲り受けたものではないか、とのことでした。
スイスのタバン社のポスター。このポスターには「タバン」とカタカナが記されているので日本向けに作られたポスターでしょう。タバンの時計は 日本では神戸居留地118番のシュオブ・フレール商会が扱っていて、明治後期から大正頃は「犬印タバン(登録商標はTRUSTY)」として親しまれていました(TIMEKEEPER kodokei.com 1. スイス時計会社)。また、ポスターの中の白黒写真が1910年(明治43)に発行されたタバンの絵葉書の写真と同一性が認められる(TIMEKEEPER kodokei.com 1. タバン絵葉書1~7)ので、このポスターもまた明治末期から大正初めごろに発行されたものでしょう。
こちらもタバン社のポスターですが、日本語の表記はありません。描かれた女性はミラノ・スカラ座(イタリア)1904年初演、その後世界各地で上演された(ている)『蝶々夫人(マダム・バタフライ)』の一場面のように見えます。
修理する時計の預かり証(明治10年)です。
明治初期店頭図
山田初代勝見・二代勝二明治初期
山田勝二写真明治中ごろ
現山田時計店の3階には「老舗時計資料館」としてゼンマイ仕掛けで動いていた時計や蓄音機に始まる歴代の商品を並べ、商いの足跡を展示しておられます。ぜひ金沢の山田時計店を訪れる計画を立てて見てはいかがでしょうか。
また、海の見える杜美術館では下の通り「引札」の展覧会を開催します。本展は所蔵する2000点を超える引札の中から約 150 点を選びだし、明治期の引札の魅力を紐解いてゆくものです。目くるめく引札の世界をぜひお楽しみください。
【展覧会名】 引札 新年を寿ぐ吉祥のちらし
【会 期】 2021年11月27日(土)〜2021年12月26日(日)
【休 館 日】月曜日
【会 場】 海の見える杜美術館(広島県廿日市市大野亀ヶ岡10701)
青木隆幸