「蘇州版画の光芒 国際都市に華ひらいた民衆芸術」記念講演会:「中国版画研究の現在」のプログラムのうち、以下の発表がYoutubeに日英中3か国語で公開されたことをお知らせいたします。
【日本語】
清初期の蘇州版画におけるイエズス会の役割についての考察
アニータ・シャオミン・ワン
バーミンガム・シティ大学
西暦1700年頃、明らかにヨーロッパの影響を受けた蘇州版画が登場した。当時、蘇州版画は中国製品としてヨーロッパと日本で人気を博していた。ところが、その生産時期が1700年代から1760年代にまでという短い期間しか続いておらず、その出現と消滅は、中国におけるカトリックと関係していた。すでに述べたように、このような蘇州版画の中には、ヨーロッパの絵画技法、とりわけ線遠近法、陰影法、ハッチングが使われる。現在、日本が所蔵する蘇州版画の中には、これらの技法がすべて盛り込まれているものもあり、更にその中には、ヨーロッパからの影響の源を直接示す題が刻まれているものもある。ヨーロッパからの影響がどのようにしてこれらの版画に取り入れられたかについては、これまでにも議論があった。講演者は、18世紀の蘇州の版画にヨーロッパの絵画技法が流用と模写されたのは、複数の手段による可能性が高い説に賛同する。しかし講演者はここで、ヨーロッパの絵画技法の導入に関しては、イエズス会が最も重要な影響源であったと主張したい。文書記録によれば、イエズス会は、最も早い時期に直線遠近法やその他のヨーロッパの絵画技法を用いたと知られる蘇州の版画家たちとつながり、場合によっては友人関係となったことがあるという。本講演では、蘇州の版画における線遠近法やその他の西洋の芸術技法の出現が、どのように中国におけるイエズス会の存在と密接に関係していたかを論じ、またその後の18世紀半ばに、版画におけるヨーロッパの絵画技法の使用が減少したことへの可能的な影響要因について分析する。
【英語】
Exploring the Jesuit Role in Early Qing SuzhouPrints
Anita Xiaoming WANG
Birmingham City University
Around 1700, Suzhou woodblock prints appeared with a clear Europeaninfluence.They became popular Chinese products in Europe and Japan. However, they were only produced for a short period of time, roughly from the 1700s to 1760s, and their emergence and disappearance was related to Catholicism in China. As already note, certain Suzhou prints made use of European pictorial techniques, most notably linear perspective, shading, and hatching. A number of Suzhou prints now in Japanese collections feature all of these techniques, some of which bear inscriptions which point directly to their European sources of influence. There has been debate about how these influences came to be in these prints. I accept that the appropriation and transfer of European pictorial techniques into eighteenth century Suzhou printmaking most likely came about through multiple means. I argue however that the Jesuits were the primary source of influence with respect to the introduction of European pictorial techniques. There are documentary records indicating that Jesuits had connections with, and in some cases friendships with the earliest known Suzhou printmakers to use linear perspective and other European pictorial techniques. The presentation will discuss how appearance of linear perspective and other western artistic techniques in Suzhou printmaking was closely related to the presence of the Jesuits in China and analyse the possible impact on the later decline in the use of European pictorial techniques in prints in the mid-eighteenth century.
【中国語】
「探讨清初苏州版画中耶稣会所发挥之作用」
Anita Xiaoming WANG
伯明翰城市大学
西元1700年前后,苏州版画中开始出现了明显的欧洲影响。此时苏州版画已经是在欧洲和日本都相当受到欢迎的一类中国产品,然而这些版画的生产时期却为时极短,大致只持续了从1700年代至1760年代之间的这段时期,且它们的出现和消失都与天主教在中国的传播有关。如前所述,这些苏州版画使用了欧洲的绘画技巧,其中最显著的是线性透视,阴影,以及阴影线的运用。目前已知有一批现藏于日本的苏州版画中同时使用了上述所有技法,其中更有一些作品直接在标题中明示其欧洲影响的来源。关于这些欧洲影响进入苏州版画的途径,一直以来学界的意见都有些分歧。部分意见指出这些欧洲绘画技巧应是透过复数途径而被挪用和转用到十八世纪苏州版画之中的,我也同意这一说法。但在此我想强调:耶稣会士是引进欧洲绘画技巧至苏州版画的最主要影响来源。有文献记录表明,耶稣会士曾和最早开始运用线性透视法及其他欧洲绘画技法的苏州版画家有所交流,甚至在有些案例表明双方之间是有友谊存在的。本演讲将讨论苏州版画中的线性透视法和其他西洋艺术技法的出现如何与耶稣会士在中国的活动密切相关,并分析造成日后十八世纪中叶苏州版画中欧洲绘画技巧的使用频率降低的因素。
さち