展覧会の一枚 《朝暾玉堂富貴瑞鳳図》高谷篁圃

20140414展覧会の一枚 《朝暾玉堂富貴瑞鳳図》高谷篁圃-1

今回ご紹介する作品は、なんとも華やかな花鳥画です。作者の高谷篁圃(たかたに こうほ)は、明治から大正にかけて京都で活躍した画家です。

続きを読む(青色の日付あるいはContinue readingを押してください)

この作品には、ずいぶん仰々しい題名が付けられています。「ちょうとんぎょくどうふうきずいほうず」と読みます。

この題名、どういう意味なのでしょうか?
まず「朝暾(ちょうとん)」とは、朝日の別名です。また「瑞鳳(ずいほう)」とは、おめでたい鳥である鳳凰のこと。画面を見ると、両方とも描かれていますね。

20140414展覧会の一枚 《朝暾玉堂富貴瑞鳳図》高谷篁圃-2
朝日が鳳凰の頭の真後ろで輝いて、まるで光輪のようです。

そして、「玉堂富貴(ぎょくどうふうき)」とは、玉蘭(白木蓮)・海棠(かいどう 中国原産のバラ科の花)・牡丹の3つの組み合わせを指します。
なぜこの3つの花を「玉堂富貴」と呼ぶのでしょうか?
まず、玉蘭という名前には「玉」の字が入っていますね。
そして、海棠の「棠」の字は、「堂」と同じ読みです。
さらに、華麗な花を咲かせる牡丹は百花の王と呼び習わされ、「富貴花」とか「富貴草」などとも称されてきました。
つまり、玉蘭の「玉」と、海棠の「堂」、そして牡丹が象徴する「富貴」で、「玉堂富貴」、というわけです。
この言葉は、家に富が満ちあふれるという意味で、とてもおめでたいものとして好まれました。
鳳凰に「玉堂富貴」、さらには日の出まで描かれたこの作品、まさにおめでたいものてんこ盛りの一枚といえます。

ちなみにこの作品、光の当たり方によって、鳳凰の目がキラッと輝くんです。
これ、鳳凰の瞳に漆(うるし)が塗られているためです。
花鳥画を描く際、活き活きとした鳥の様子を強調して表すため、その瞳に漆を塗るという技法は、中国で古くから用いられてきました。
日本でこの技法を用いた画家に、江戸時代に活躍した伊藤若冲(いとう じゃくちゅう)がいます。
おそらく若冲は、中国の古い花鳥画を見て、この描き方を学んだのだと考えられます。
この作品も、そうした古くからの花鳥画の表現を正しく継承した作品といえるでしょう。

田中伝