海の見える杜美術館では、10月14日(日)まで「西南戦争浮世絵 -さようなら、西郷(せご)どん-」を開催しております。今回はその出品作品の中から、西郷隆盛が地獄で大暴れする《隆盛冥府大改革》という作品を紹介します。
鈴木年基画《隆盛冥府大改革》 大判錦絵三枚続 明治10年12月7日届出
画面の中央では、西郷が左手で鬼の首を掴み、右手で閻魔大王を殴り倒しています。その傍らでは桐野利秋が2体の鬼を締め上げています。また、画面の左奥に目を移すと、薩摩兵士たちが逃げ惑う鬼を追い回している様子が見えます。狼狽する閻魔大王らとは対照的に、西郷を始めとする薩摩軍は猛々しく描かれています。
詞書には、1877年9月24日の城山において、兵を集めた西郷が冥府へ攻め入り、閻魔大王を打ち倒し冥府の王になった旨が書かれています。この作品は、西南戦争終結から2か月余りを経て制作されましたが、詞書の内容が、実際に巷で流れた風説をもとに書かれているのか、制作者の想像で書かれているのかは不明です。西郷が生きている間に果たすことができなかった改革を、せめてあの世で果たさせてあげたいという世間の彼に対する同情が、この作品を生んだのかもしれません。
大内直輝