今までのブログでもご紹介してきたように、当美術館は、自分たちで作れるものは自分たちで作ろう、というスタンスです。
いつものように、学芸の森下さんから依頼がありました。
森 下 :ちょっと看板がいるので、下地になる屏風を作ってくれる? 予算を使わずに。
うみひこ: ・・・ 。 テープは買っていいですか?
廃材のコンパネと、ガラス繊維入りのテープを使って屏風を作ることにしました。
屏風に使われている昔ながらの技法です。
詳しくは「紙蝶番」で検索してみて下さい。
うみひこ
今までのブログでもご紹介してきたように、当美術館は、自分たちで作れるものは自分たちで作ろう、というスタンスです。
いつものように、学芸の森下さんから依頼がありました。
森 下 :ちょっと看板がいるので、下地になる屏風を作ってくれる? 予算を使わずに。
うみひこ: ・・・ 。 テープは買っていいですか?
廃材のコンパネと、ガラス繊維入りのテープを使って屏風を作ることにしました。
屏風に使われている昔ながらの技法です。
詳しくは「紙蝶番」で検索してみて下さい。
うみひこ
引札とは、無料で配られる広告、いわゆるチラシのことです。
多くは木版やリトグラフの技術を用いて印刷されているのですが、中にはエッチングや空摺りを織り交ぜているものもあります。
このたびは、私、さちの心に残ったおよそ100年前の引札の技術を、当館の所蔵品の中から少しご紹介いたします。
まずは、紙に凹凸をつける空摺りの技法が用いられた引札から。
横から光を当てると、このように模様が浮かび上がります。
ここから先は空摺り以外の工夫です。
いかがでしょうか。
たかがチラシ、されどチラシ。
江戸時代の浮世絵版画から脈々とつながる心意気を感じます。
さち
青木隆幸
読み:
(有功賞)商標 延年
酒類販売所
愛知郡字石橋
(角 吉)森野安次郎
読み:
石油正種油商
かぜねつ病一切の妙薬 海内無双 橋本散
大阪和田政吉監製
鳥取市若桜町 代理店 二宮豊治
3、
《旭日 流水 梅花に双鶴と鶴の子1羽》26.0×37.3cm
読み:
酒塩醤油薪炭商
京都東山通新南
商號 鍵學 澤本商店
4、
《旭日 金雲 雪中松に温め鳥》25.5×36.3 cm
読み:
米商
京都市佛光寺通富小路東入
米卯事 三牧卯兵衛
5、
《扁額 旭日 番の兎と3匹の子兎に藪柑子(十両)》25.8×37.3 cm
読み:
和洋諸傘提灯商
並ニ 直し物仕候
大阪市南區安堂寺橋西詰
いくよ(手提提灯 入)
6、
《旭日 松竹梅に羽子板を持つ美人》25.8×37.7 cm
読み:
萬荒物砂糖掛物文具
履物塩魚乾物賣薬
荒□
商号 くすりや
(山 久)中井商店
7、
《陣営の恵比寿大黒 財宝積む馬をひく福助》26.3×38.0 cm
読み:
呉服洋反物商
大原郡大東町
(入山 ア)青砥仙太郎
8、
《賞状柄 旭日 瑞雲 鶴亀 松》23.5×32.1cm
読み:
木綿商
諸太物仕入所
金巾染地類
各國縞纃類
染手拭風呂敷
右之品直段出極相働調進仕候間
不限多少ニ御用向之程奉希上候也
京都あけず松原南へ入
(丸 安)安盛善兵衛
12月もいつの間にやらもう半ばです。
杜の遊歩道のひょうたん池では
遅咲きのモミジが真っ赤に染まった葉をまだつけています。
この葉が落ちる頃には2015年も終わっていそうですね。
今日の一枚。
N.T
もりひこ
11月も終わりに近づき
杜の遊歩道の木々たちの落葉も進む。
裸木となるものもちらほら現れ
冬の到来を告げてくれています。
「枯れ木も山の賑わい」というが
木々にとっては 腑に落ちない言葉だと思う。
木々の幹ひとつひとつに 異なる造形があり
奥深い美的な景観には 見事というほかはない。
今日の一枚。
N.T
杜の遊歩道も秋が深まり 落葉樹は染まった葉を 少しずつ落とし始めました。
樹に残っている葉は単色で美しく
地の上に散った葉は 異なる色の葉と混じり合い なお一層美しい。
自然界の彩りは 互いの色を常に引き立て合っていました。
自然を愛でていると なんだか色彩感覚が養われそうです。
今日の一枚。
N.T
前回の記事に続いて、名古屋の美術館に行った感想です。
「展覧会の紹介なのに記事にするのが遅すぎる」という(内部からの)野次が飛んできています。
私もまったくもってそう思います。この記事で紹介させていただく展覧会、一ヶ月以上前に終わってますからね。我ながらひどいもんですよ。でも書きますよぉ!
「芸術植物園」、こちらは10月3日まで愛知県美術館にて開催されていた展覧会です。
図録も素敵!フォントやイラストがおしゃれだ~。
このページにある、ロバート・ジョン・ソーントン編《フローラの神殿》(町田国際版画美術館蔵)を一度見てみたかったのです。これは、博物学者リンネの植物の分類学に感銘を受けたソーントンが編集して世に出した植物図版集です。1798~1807年に初版が刊行されました。
植物の姿は博物学的知識に忠実に描かれていますが、背景(そもそも背景がある植物画も珍しいのですが)は古城や異国風の建物など、その植物が生えている環境とはほぼ無関係な場面。キューピッドがいる絵もあります。これらの絵には植物学的な解説に加えてその植物にまつわる神話や詩もついていたとのこと。学問と幻想の融合ですね。いくら見ても見飽きない、この美しい豪華な図版集を当時手にすることができた人は幸せだっただろうと思います。ウィキペディアで調べた限りですと、ソーントン自身は出版の資金繰りに苦労した上に破産して極貧の中亡くなったようですが。
展示では、壁一面にこれらがずらーっと並んでいました。一枚一枚が結構大きくて迫力ありました。見ることができて本当によかったです。
こちら私は初めて知りましたが、五百城文哉(いおきぶんさい)という画家が描いた明治期の作品《百花百草図》(栃木県立美術館蔵)。縦140センチを越える大きな作品です。この生々しい風景や植物を描いた作品が、油絵ではなく、絹地に水彩で描かれています。軸装されている作品です。こんな絵が描かれていたなんて、明治という時代は奥が深いなぁと思いました。小杉放庵記念日光美術館で今まで何度かこの画家の展覧会を開催していらっしゃるようですね。
他にも、現代の作家の方の作品、古い植物図譜、日本画洋画、ありとあらゆる植物の芸術があっていろんな刺激があり、最初から最後までずっと楽しかったです!見終わったときはまるで植物園の中を歩いた後のようなすがすがしさ。
展示室を出ると、こんなかわいらしいスペースがあって、
色々な参加型のプログラムが用意されていました。
大人もOKとのことでしたので、せっかくなので参加させていただきました。
色々な素材を組み合わせて、自分で架空の植物を作る「新種植物押葉記録」。
自由に作っていいにも関わらず、いわゆるお花のかたちから抜け出ることができず…私の頭からはこれが限界でした。植物名「ホウショクノジダイデス」、一応食虫植物で手に似た葉で積極的に虫を捕まえるという設定です。名前に特に意味はありません。適当につけました。
強行軍での美術鑑賞とはなりましたが、この2つの展覧会から、とてもいい刺激いただきました。遅筆なのでブログでのご紹介がいつも遅れるのですが、今後もここでこっそり色々展覧会を紹介させていただきますね。
それでは!
海の見える杜美術館所蔵の引札(商店がお客様に配った広告)を整理していると、竹内栖鳳の落款のある作品を2点見つけました。
引札《龍虎図》
引札《旭日青竹清流に虎》
竹内栖鳳は、掛け軸や屏風といった日本画の型にこだわらず、いろいろな素材に絵を描いた人です。たとえば団扇絵もたくさん描いていますし、珍しいところでは、墨のデザインも手掛けているので、引札のデザインをしていたとしてもおかしくはありません。
竹内栖鳳『団扇画綴帖』より《青竹に烏瓜》 (海の見える杜美術館蔵)
竹内栖鳳 墨銘《ぬれからす》 鳩居堂製 (使用済み)(海の見える杜美術館蔵)
ですからほんの一瞬、新発見作品かと期待が膨らんだのですが、
一見して竹内栖鳳らしくありません。栖鳳は旧弊を打ち破って次々と新しい絵画表現に取り組んだ革新的な作家のはずなのに、これらの引札からは、何かの絵の手本を引き写したかのような旧態依然とした印象を強く受けるのです。
栖鳳の残された絵をいろいろ調べてみましたが、同じような作品は確認できませんでしたし、念のため栖鳳が若いころ勤めて刺繍画などを手掛けた高島屋に写真でも資料が残っていないかと廣田孝『高島屋「貿易部」美術染色作品の記録写真集 京都女子大学研究叢刊47』(京都女子大学2009年)をめくってみたりしたのですが、やはり似た絵を見つける事は出来ませんでした。
それでは真贋判定の基本、落款の書体や印章の形はどうでしょうか、
まず印章を見てみましょう。栖鳳が実際に使用していた400種類以上もの印の中から、下の2つがとても似ていることがわかりました。
とても似ています。しかし、いずれも細部が異なりますので、引札に使われた印は似せて作られもので、栖鳳が所有する印を使ってはいないことがわかります。
落款の書体はどうでしょうか。詳細な分析は割愛しますが、本人の筆跡とは感じが違います。特に《旭日青竹清流に虎》の鳳の字は、抑揚の弱い、栖鳳の特徴とは異なる書体になっています。
ひとつの参考として、似ている栖鳳の落款を提示しておきますので見比べてみてください。
制作年代から考えるとどうでしょうか。これらの引札には制作年代の根拠となる情報は残されていません。そこで唯一の手掛かりともいえる落款の特徴から推定すると、明治末から大正初めの1910年頃が考えられます。1900年のヨーロッパ周遊から帰国して《飼われたる猿と兎》(東京国立近代美術館蔵)をはじめとしたリアルな動物の描写で数々の名作を生み出している頃です。この時に栖鳳が古い時代を踏襲しただけのような絵を描いて引札にするとは考えにくいのではないでしょうか。
栖鳳が描いた虎の一例をご覧ください。緻密なスケッチを繰り返して生み出された作品からは、たたずまいから毛並みまで、動物の本質に迫ろうとする姿勢がひしひしと伝わってきます。
以上のことをふまえると、これらの引札の絵を竹内栖鳳が描いたと断定するのは難しいと思います。
引札は、商店や商品の名前を印刷して、宣伝のために配られるものですから、現在目にするものの多くには、絵だけではなくいろいろな文字が印刷されています。
栖鳳の名前が記された2枚の引札には、文字が印刷されていませんし、裏には商品番号のようなものが捺印されているので、引札の商品見本、あるいは後から名前を入れる名入れ引札のようです。
明治時代の終わり、あるいは大正時代の初めごろ、きっとこの引札に商店名を印刷してお得意様に配って回ったお店があったはずです。
そしてこの引札をもらった人は、好きなところに貼っては眺めて、栖鳳の絵を飾った気分になれたのかもしれません。
ちなみに、栖鳳は絵を複製することに積極的な人でしたから、本物の複製版画もあります。
ところがこだわり抜いて作った複製版画の中には、あまりに精巧で、美しすぎて、本物の“作品”として出回ってしまう事もあります。
これは複製版画です。
部分を拡大してみても、とても版画とは思えない美しさです。
さち
青木隆幸