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展覧会

Exhibitions

芸術家たちのセンチメンタル・ジャーニー

【趣 旨】

旅することは、古来芸術家たちのインスピレーションの源のひとつでした。日本の芸術家たちも、様々な場所を旅し、そしてその体験を自身の表現に生かしています。本展覧会では、旅する芸術家たちの足跡を、海の見える杜美術館が所蔵する前近代から近代にかけての日本絵画コレクションでたどります。 

ここでは、展覧会の4つの見どころをご紹介します。ここに登場する芸術家たちのほとんどは別の時代を生きていますが、松尾芭蕉(まつおばしょう)は東北で西行法師(さいぎょうほうし)の足跡をたどり、与謝蕪村(よさぶそん)は芭蕉の旅を描き、池田遙邨(いけだようそん)は芭蕉を強く意識した旅の俳人・種田山頭火(たねたさんとうか)に刺激されて空想の風景を描くなど、彼らはどこか足跡を繋げながら、古人の旅に影響を受け、自らもまた旅をすることで活動の糧としています。歌人たちは古(いにしえ)の先達(せんだつ)が詠(よ)んだ名所に憧れ、画家たちはまだ見ぬ土地の風景をスケッチに留めようとするなど、芸術家たちが旅にでる理由は様々です。本展覧会では、彼らが旅に惹(ひ)かれる背景を、作品を通してご覧いただきます。 

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【基本情報】

[会期]2023年9月2日(土)〜2023年10月22日(日)

[開館時間]10:00〜17:00(入館は16:30まで)
[休館日]月曜日(ただし9月18日(祝)、10月9日(祝)は開館)、9月19日(火)、10月10日(火)
[入館料]一般1,000円 高・大学生500円 中学生以下無料
*障がい者手帳などをお持ちの方は半額。介添えの方は1名無料。*20名以上の団体は各200円引き。
[タクシー来館特典]タクシーでご来館の方、タクシー1台につき1名入館無料
*当館ご入場の際に当日のタクシー領収書を受付にご提示ください。
[主催]海の見える杜美術館
[後援]広島県教育委員会、廿日市市教育委員会


【イベント情報】

■当館学芸員によるギャラリートーク

日 時:9月2日(土),10月7日(土) 各13:30~(45分程度)

会 場:海の見える杜美術館展示室

参加費:無料(要入館料)

事前申込:不要


【章立て・主な出品作品】

第1章 歌人の旅

遠方を訪れることが現代に比べてはるかに困難であった古来より、歌人たちは各地の名所や歌枕に憧れを抱き、旅に出ました。平安時代の歌人在原業平(825~880)が主人公とされる『伊勢物語』東下りの、失意の男が華やかな都を離れて東国へ下る旅。世俗から離れて東国へ向かった西行(1118~1190)が、業平の歌に詠まれた名所や歌枕を巡る旅。そして、松尾芭蕉(1644~1694)が西行の足跡を辿りながら奥州・北陸を訪ねた旅。これらは、訪れた先の景物に心を寄せ、古の先達たちの旅路に想いを馳せながら、自らもまた歌を詠む、歌人ならではの旅です。
ここでは、彼らの旅がいかに後世の歌人たちの胸を打ち、その制作の原動力となったのか、作品の中でどのように表現されているのかをご紹介します。

《西行物語絵巻》(部分)  2巻のうち 江戸時代 海の見える杜美術館
与謝蕪村《奥の細道画巻》(部分) 1巻 江戸時代・安永7(1778)年 海の見える杜美術館

第2章 芸術家たちの旅の記憶

関所の撤廃や交通手段の進化により旅が容易になったこともあり、明治時代以降芸術家たちは日本各地、あるいは海を越えて旅をしました。彼らが旅をした理由は、貴人の旅の記録係としての随伴、万博や西洋の芸術を視察するための渡欧、絵画制作のための取材など様々です。そしてその旅の記録ともいうべきスケッチ、収集した資料からは、画家たちが何を目にし、何に感動を得たのかを、生々しく感じ取れることでしょう。即興的に見えるスケッチにも、構図の取り方などに画家独自の美意識が反映されていると言えます。
ここでは当時の旅の道の途中で見られた風景や風物、そして旅で得た新鮮な感動の記憶をお楽しみください。

幸野楳嶺《北越奇火》
1幅 明治18年(1885)
海の見える杜美術館

竹内栖鳳《北越探勝帖》1冊22面のうち 
明治19年(1886) 海の見える杜美術館 

第3章 旅に見た風物を描く

ここでは、近代の画家たちが旅先の風物にインスピレーションを受け描いた作品をご覧いただきます。彼らは古くから愛されてきた名所に自ら足を運び絵に描くその一方で、名所の伝統をはずれた場所に個人的な趣を見出し、作品として残しています。
竹内栖鳳(1864~1942)は、在原業平も東下りの際に見た富士や、芭蕉が愛した松島を、自らの目で見て景色を描き、画題に新たな命を吹き込みました。他方で栖鳳は、それまで絵画にあまり絵として描かれてこなかった茨城県の潮来を訪ね、その風景に、画趣を見出し描きました。小松均(1902~1989)もまた、旅先の伊豆で、太平洋と山並みの広がり、その壮大さに覚えた率直な感動をのびのびと描き出しています。
画家たちが旅によって得た感興をいかに美術に昇華させたのか、作品を通じてご覧ください。

竹内栖鳳《潮来初夏》1幅 昭和4年(1929) 海の見える杜美術館
冨田溪仙《支那風景》6曲1隻 海の見える杜美術館

第4章 旅の画家・池田遙邨

倉敷に生まれ、京都の竹内栖鳳に学んだ画家・池田遙邨(1895~1988)は、旅を好み、旅の風景を多く作品に残した画家です。若い頃より京都の先輩画家たちを慕い、スケッチの旅に行き郊外の風景を描きました。やがて江戸時代の浮世絵師・歌川広重(1797~1858)に傾倒し、広重の足跡をたどるべく東海道五十三次を歩き、その集大成として《昭和東海道五十三次》を描きます。89歳で描き始めた山頭火シリーズは、自分と同じように旅を愛した俳人・種田山頭火の俳句にちなんだ作品です。年齢のこともあり、その足跡を自分の足でたどることは断念しましたが、俳人への敬慕と旅への衰えることのない憧れが見て取れます。
遙邨はその長い画家人生の中で、様々な芸術家たちに心を寄せ、その足跡をたどり、また画風を変化させています。ここでは遙邨が見た日本各地の旅先の風景を、遙邨の長い人生の旅路と共にお楽しみください。

池田遙邨《ぐるりとまはって枯山》額装 昭和62年(1987) 海の見える杜美術館