展覧会
EDO⇔TOKYO −版画首都百景−
【趣 旨】
このたび、海の見える杜美術館は、「Edo⇔Tokyo ―版画首都百景―」と題し、江戸から明治にかけて移り変わる首都の風景を、当館所蔵の版画作品を通してご覧いただく展覧会を開催いたします。
慶長8年(1603)に幕府が開かれて以降、それまで地方の一城下町に過ぎなかった江戸の町は急速に発展し、18世紀には100万人を超える大都市にまで成長を遂げました。その過程で江戸の各地に名所が生まれ、18世紀の後半には、それらを描いた名所絵が浮世絵として制作されるようになります。特に、葛飾北斎(1760-1849)や初代歌川広重 (1797-1858)らは、江戸の町の広がり、賑わい、情緒をたくみに描き出し、それらは人々の心を強く惹きつけました。
1868年、大政奉還により江戸の世が終わり、明治という新しい時代が始まります。新しい都・東京には近代化の波が押し寄せ、洋風建築や鉄道など、近代化を象徴する景物が次々と姿を現しました。そのニュースは開化絵と呼ばれる浮世絵に鮮やかに活写され、文明開化に沸く人々の好奇心に応えるメディアとして喜ばれました。その一方で、三代歌川広重 (1842-1894)の《東京名勝図会》のように、江戸の名所絵の伝統に倣った作品も引き続き制作されます。また、小林清親(1847-1915)とその弟子井上安治 (1864-1889)は、名所絵の手法を踏襲しながらも、西洋画の光や影の表現を取り入れた光線画と呼ばれる風景版画を制作し、東京の街の新たな情緒を描き出しました。
本展覧会では、江戸後期から明治初期にかけての首都の風景を写した浮世絵を、3章構成で展示します。第1章「江戸の風景―浮世絵の中の百万都市―」では、浮絵と呼ばれた初期の名所絵と初代広重の作品を、第2章「文明開化の風景―開化絵に見る新名所―」では開化絵を、第3章「東京の風景―三代歌川広重と井上安治―」では、三代広重の名所絵と井上安治の光線画を、それぞれ紹介します。
賑わう江戸の町へのあこがれ、近代化していく都市のもたらす高揚、あるいは去り行く時代の面影に向けた眼差し——激動の時代における江戸・東京を描いた版画に映し出されたのは、稀代の大都市に抱いた人々の想いでもあったといえるでしょう。
絵師たちが切り取った多様な大都市の魅力をどうぞお楽しみください。
【基本情報】
【会期】2020年6月20日(土)~8月23日(日)
【会場】海の見える杜美術館(広島県廿日市市大野亀ヶ岡10701)
【主催】海の見える杜美術館
【後援】広島県教育委員会、廿日市市教育委員会
【開館時間】10:00~17:00(入館は16:30まで)
【休館日】月曜日(但し8月10日(月・祝)は開館し、翌8月11日(火)を休館)
【入館料】一般1,000円、高大生500円
【イベント情報】
■当館学芸員によるギャラリートーク
日 時:6月27日(土)、7月25日(土)、8月22(土) 13:30~(1時間程度)
会 場:海の見える杜美術館 展示室
参加費:無料(ただし、入館料が必要です)
事前申し込み:不要
※ギャラリートークは、新型コロナウイルス感染拡大防止のため開催中止
■ワークショップ
「木版画の多色刷りを体験してみよう」※小学校高学年~ 担当:向井陽子氏(版画家・横川創荘)