展覧会
美酒佳肴 ―絵で味わう美(うま)きもの―
人々が集う様子を描いた風俗表現の中には、酒宴の様子や宴の準備をする人々、食材を売る店先など、生を謳歌する人々の営みが描かれます。また魚介や禽獣(きんじゅう)、野菜や果物などの動植物は、その姿かたちの美しさだけでなく旬の佳肴(かこう)として表現されることもしばしばです。
本展では飲食という観点から、絵画作品にみられる風俗表現、動植物表現をご覧いただきます。当館コレクションのほか、近年新たに見つかった長沢芦雪(1754-1799)作品(個人蔵)も展覧会初出陳します。飲み、食べ、旬を感じ味わう人々の生きる喜びを、作品と共にお楽しみください。
【基本情報】
[会期]2024年8月3日(土)〜2024年9月23日(月・休)
[開館時間]10:00〜17:00(入館は16:30まで)
[休館日]月曜日(ただし8月12日(月・休)、9月16日(月・祝)、9月23日(月・休)は開館)、8月13日(火)、9月17日(火)
[入館料]一般1,000円 高・大学生500円 中学生以下無料
*障がい者手帳などをお持ちの方は半額。介添えの方は1名無料。*20名以上の団体は各200円引き。
[タクシー来館特典]タクシーでご来館の方、タクシー1台につき1名入館無料
*当館ご入場の際に当日のタクシー領収書を受付にご提示ください。
[主催]海の見える杜美術館
[後援]広島県教育委員会、廿日市市教育委員会
【イベント情報】
■当館学芸員によるギャラリートーク
日 時:8月10日(土)、9月7日(土) 各13:30~(45分程度)
会 場:海の見える杜美術館 展示室
参加費:無料(ただし入館料が必要です)
事前申込:不要
■夏休み企画ワークショップ お皿に盛った食べ物を工作してみよう
小学生向け展示解説の後、描かれた果物や野菜の絵をお手本に作品をつくってみませんか?
日 時:8月17日(土) 13:30~(2時間程度)
会 場:海の見える杜美術館 多目的室
対 象:小学4年生以上
定 員:6名(先着順、要事前申し込み)
参加費:無料(ただし入館料が必要です)
申し込み方法:お電話かメールにてお申込みください。
その際、参加者のお名前と電話番号をお知らせください。
なお、先着順にて定員に達し次第締め切りとさせていただきます。
電 話:0829-56-3221
メールアドレス:info@umam.jp(件名に「ワークショップ参加希望」とご記入ください)
【章立て・主な出品作品】
第1章 飲食の舞台裏
現代の私達と同じように、往時の人々も飲食について大変興味関心があったのでしょう。手にした海や山の幸を食べるために調理する光景は、宴席の様子とともにしばしば描かれてきました。ここでは、前近代の作品の中から、調理する様子や食材を売る店先などを描いた風俗表現をご紹介します。
中でも室町時代にその原本が成立した《酒飯論絵巻》(No.1)は、飲食にまつわる豊富な風俗表現が注目を集める作品です。鳥や魚をさばいたり燗酒を用意したり、はたまた箸で米粒を選定するなど、酒や酒肴、飯の準備に忙しい様子が生き生きと描かれています。飲食に関する風俗表現は絵画作品だけでなく、各地の物産を紹介した『日本山海名産図会』(No.6)などの版本の挿図としても見うけられ、『会席料理細工包丁』(No.7)などの料理本も江戸期には数多く出版されました。
第2章 食材に見る幸せ
自然からもたらされる恵みである食材は、特に近代以前においては味わう喜び以上の意味を持ち、豊漁や豊作、子孫繁栄の願いをこめて描かれました。《海河豊漁図 》(No.26)のような群れをなし泳ぐ魚や、たくさんの実をつける果実や瓜などを描いたものはその好例です。その淵源は中国の吉祥図像に求められます。
また、毎年巡ってくる魚介や作物の旬は、まさに五感をもって実感できる時の移ろいであり、私達に季節の訪れを感じさせてくれるものです。そうした旬の佳肴は、四季の風情を表すものとして季節の花鳥とともに表されました。風景版画で広く知られた歌川広重(1797~1858)も、狂歌の内容に合わせて魚介と季節の植物を取り合わせた抒情性豊かな作品を残しています。
豊かな恵みを授けてくれる自然への賛美と、人々の願い溢れる作品をご覧ください。
第3章 食材の美を味わう
近代になると、これまで描かれ続けた子孫繁栄や豊かさを願う吉祥図像の伝統を受け継ぎつつも、画家たちは描く対象としての美を食材の中に見いだし、自身が求める表現のあり様に向き合い描いていきます。吉祥図像である瓜図の枠組みを用いて小さな蟻の姿を描いた竹内栖鳳(1864~1942)や、緻密な観察によって克明に魚を描写した村上華岳(1888~1939)、大野麥風(1888~1976)らの作品からは、対象の質感や量感、また生態までも、より真に迫り描き出そうと追求した画家たちのまなざしが感じられます。そうした近代画家たちの表現の中にも、食材の旬が教えてくれる四季の風情という、時代を超えて描かれ続けた美がありました。
近代画家たちによって表された、さまざまな美(うま)きものをご堪能ください。
第4章 饗宴にようこそ
美酒と旬の佳肴がそろったならば、皆さんは一人で楽しまれますか?一人で味わうのも趣がありますが、家族や友人、同僚、時には初めて会う人と宴を催すのもまた一興です。最後に、そんな楽しい宴席を描いた作品をご覧いただきましょう。
古くから人々は、儀式や行事の折にふれ、酒宴や茶会を催して客人を饗応し、飲食をともにすることで結びつきを強めてきました。人は時に、《飲中八仙図屏風》(No.72)の風流人たちのようにお酒を飲みすぎてしまうこともありますが、描かれた宴席の人々は旬の美味を味わい、巡る季節の情趣に感じ入った様子で、笑みをたたえています。彼らが喜び分かちあうのは、美酒佳肴がもつ味わいそのものだけでなく、季節ごとの恵みを再び授かることができた幸せであったのかもしれません。相手をもてなし宴席で楽しむ人々の様子には、巡りゆく時間を仲間とともに過ごす喜びが満ちています。